多様性について

 「多様性の科学」という本(マシュー・サイド著、2021年)を読んだ。組織や企業でイノベーションを起こす(それ以前に健全な組織としてあり続ける)には多様性が如何に大切かを多くのエビデンスを基に科学的(統計的)手法で解説している本である。中でも「平均値の落とし穴」は普段実験の平均値を導出し、それを基に議論している身にはとても考えさせられた。
 米空軍機のコックピットは1926年に標準規格化されたものであるが、事故が絶えなかったという。そこで、4000人のパイロットの身体測定を実施した。その結果が面白い。測定項目(10項目)の全てが平均値の許容範囲(中央値の30%以内)に収まっていたパイロットは一人もいなかった。パイロットも十人十色ということである。平均を採用した設計をすればよい、というものでは無いとのことだ。これと同じことがダイエットにも言えて、皆が確実に血糖値が上がる食べ物は無いようである。人それぞれ異なっており、一般に体に良いと言われている食べ物でも血糖値が上がり、太る人もいる。これも十人十色。
 もう一つ、「硬直したシステムが生産性を下げ、離職率を上げる」にはうなずいた。最初からインストールされているブラウザではなく、自分で選択してインストールし、自発的にカスタマイズする人は離職率が低い、とのことだ。絶えず変化を続ける世の中では、初期設定に疑問を呈する力があるかどうかは大きな違いをもたらす。マニュアルに縛られず、自分なりに工夫することは、満足感を感じながら、高い生産性を発揮する、のだそうだ。

マニュアルの枠から出て、悩もう。最初は平均を採用しても、これが「最善」ではないかもしれない。
「精神的にしなやかな人」「フットワークが軽い人」「試行錯誤する人」。
悩もう。疑おう。考えよう。

2023年03月21日