ダッカとアーメダバード

29の2月から3月に、インドを一人旅した。
当時、建築家になることを夢見ていた。近代建築の巨匠といわれるルイス・カーンとル・コルビュジェの建築を建築家を志す学生が通るように写真や設計図などを羨望の眼差しで眺めていて、実物を見たいと思い、見に行った。バングラデシュの首都ダッカの国会議事堂(ルイス・カーン)、アーメダバードの繊維業会館(ル・コルビュジェ)。建築そのものもそうだったが、現地での体験や空気感が今も頭に残っている。

まず、ダッカ。インドのカルカッタ(現:カルカタ)から、深夜特急バスでダッカに入った。深夜特急バスは荒い運転だった、完全舗装とは言えない道路をクラクションを鳴らしながら、抜いて抜いて突っ走る。時たま、トイレ休憩として、荒野で(全く暗くて荒野かどうかも分からない)止まり、用をたす。明朝に、ダッカの郊外(?)のバスターミナルに着く。バスから降りた時、カルカッタより湿気が多く感じられた。そこから満員の路線バスに乗り、国会議事堂へ。
芝生の中、それも水上に浮かんでいるような巨大な建築物。
芝生からずっと眺めていた。持参した小さなスケッチブックにスケッチしながら。
時たま周りを歩いた。
スケッチをしていると、何人かのダッカの人たちに声を掛けられた。
幾つかの出会いがあり、いい思い出ができた。(が、その時の話はまたいつか。)

アーメダバード(アフマダーバード)はインド西部のクジャラート州の都市である。パキスタンに近い(といっても900 Km位あるのだが)ためか、乾いた土地だった。砂ぼこりの街、裸の山々が印象に残っている。街中や郊外には、地下を掘った階段井戸などの遺跡が多い。サバルマティー川の近くにある繊維業会館では、スロープを上ったピロティ上の屋外空間には欧米からの旅行者、男性と女性が別々に涼んでいた。多分、彼らも建築の学生なのだろう。
だが、何と言ってもアーメダバードはシャトルンジャヤ山の山岳寺院都市の記憶。山、それも裸の山の上に寺院群がある。山上からの光景は荒野が広がっていて、なんともとても遠くに来たような、寂しさを感じた。

やはり、旅はいい。自分の目で見て、自分の足で歩いて。その土地の人と何気ない会話をして。そして、何よりもその土地の空気を吸って。

 

2023年03月19日